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February 07, 2014

槇原敬之の歌詞の秀逸なオチ

どちらかというと歌詞よりもアレンジや楽曲方面を評価しているけど、文字になっている分だけ歌詞についての方がいろいろと素人なりに口を出しやすい部分がありますよね。

この人の歌詞で特に思うのは1番2番の後の大サビ。今回の趣旨で言う所のオチの歌詞に印象的なものが多いということ。歌詞に時間軸があって、多くの場合は物語が進行していって、最後まで聞くとその結果に辿り着く。
その形式はネタ的に落とすもの、後日談が語られるもの、自分の中で解答を得るもの。この3つに大別した。

まずネタ的に落とすもの。彼が大阪出身であるというのはこじつけ染みているけど、割と笑いに向かうことがある。大阪の人ってオチのない話が苦手だったりしませんか。

君の自転車(under wear)
 タバコはその後にしよう
ケンカした彼女に謝りに行くんだけど、そんなのはタバコを買いに行くついでの話だ。と虚勢を張っておいてのオチ。詞に茶目っけがある。タバコも買うには買うんだってね。

モンタージュ(such a lovely place)
 電車で二駅の所で今日も笑ってる
『心を奪った犯人』というカリオストロ的な比喩で相手を例えている。文脈を無視すればまるで浮かれた犯罪者が高笑いしているかのような文章が、この歌詞の最後に来ることで、二重の意味としてうまくマッチしている。この歌詞のせいか分からないけど、そこで音楽が揺れて不穏になって、悪の笑いになってるところがすごいなって勝手に思ってます。

spy(pharmacy)
 嘘も見抜けないほど恋に落ちた役立たずのスパイを
彼女の怪しい行動を追いかけて確信に至りながらも、見て見ぬふりをしてしまう。そんな自分は恋に落ちた役立たずのスパイですよと。洒落てる。
落胆気味に歌うのではなく怒りが籠っていて突き放すように歌う捨て台詞なんだな。

どぼてん(under wear)
 帰ったら部屋の掃除は全部僕がするから一緒に帰ろう
ケンカした彼女をつかまえて一件落着の後のオチ。歌詞の最初に枕の羽根で部屋が散らかったことを最後に引っ張ってくる。さっきまで必死に彼女を探しまわってたのに、そこ気になってたのかよ!こうして目線が日常に帰っていくところが魅力的です。

 

次に、葛藤の後の最終的な判断、後日談タイプのオチ。どうしようどうしようと迷いながらも身を引く切ない感じの詞になってます。

彼女の恋人(self portrait)
 どこへも連れ去らない 僕のものじゃなくても君がやっぱり好きだから
連れ去りたい連れ去りたいと1番2番で歌うんだけど最後には『連れ去らない』となる。

ハンスパ(cicada)
 あの娘を逃がした
身分の違いで悩んでいるんだけど、やっぱり諦めた。

ラブレター(under wear)
 ずっと僕のポケットの中
渡そうか渡そうかと思っていた手紙だけど、やっぱり渡せなかった。

I need you.(under wear)
 そしてただ君の手を温めてる
都合のいい男から脱却したいけど、やっぱりできなかった。

 

↑適当じゃないですよ。
最後は自分の中で解決して結論を得るタイプ。後期に多い。

太陽(太陽)
 それがとても嬉しいから
信じられるものが無い中で『温もりをまた感じ始めていた』『当たり前に感じていた僕に初めて気づいた』と徐々に太陽の存在に気づいていく。そうして自分が当たり前に思っていただけで、とても身近に太陽という約束された恩恵が存在したじゃないかという確証を見つけ出して、やったーって歌詞。核心に迫っていく過程に沈みと盛り上がりがあって、鬱屈した気分に始まり晴れ晴れとした気分で締まる、最後の一節が気持ちの良い、大作というべき一曲。

呼んだ後に(explorer)
 いつもそばに居てくれてありがとうと言うよ
仕事か何かで大事な人と一時的に離れて、帰った時に君は何と言って出迎えてくれるんだろうと考えていたはずが、自分本位の考えから解脱して、相手本位に成長するオチ。
『君が何を言うのか』知りたいという出だしにもかかわらず、オチがこうであるという意外性が好き。

ほしかったもの(explorer)
 今までで一番素敵なものを僕はとうとう拾うことが出来た
人に与え続ける行為が転じて自分を満たす行為へ昇華したという綺麗なオチです。それまでにも『笑う顔が見れて嬉しかった』とは言っている。けどその時点ではまだ自覚できていない。答えを得るのは『振り返ってみたら』からの転調後であって、勢いを付けて結論へ流れ込む形が感動を誘います。

カーテンコール(dawn over the clover field)
 思いもしなかったものに感謝する日が来るんだ
与えられた環境の中で成長することに意味を見出す。これも人称は違えど上と同じ『振り返ってみたら』系で、今の自分がいるのは嫌だった経験も含めてのことだろうと結論付ける。この曲を聞くと敵味方関係なくキャストとして出てくるという理由でマザー2を思い出す。どれも君の成長を支えたものだよって。

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