ガンダム小説本紹介その2 タイラントソード
3か月ぶりとなるガンダム小説コーナー第2回は「タイラントソード」。
月刊ホビージャパン1987年9月~翌年2月まで連載されたZガンダム外伝。
コンセプト:藤田一巳 ストーリー:藍田 豊
これを小説扱いすると異論が出てもおかしくないくらいページ数が少なく、実に毎号1ページ。11月号は小説パートが休載。最終の2月号だけは2ページ掲載された。
計6ページしかない小説というかフォトストーリーである。文章量も紙面の半分使ってないし。
その少ない情報量故にウィキペディアを読めば事足りるであろう。
ひとことで説明すると、場違いな最強MSがティターンズに合流する前のシロッコの戦力を壊滅させて歴史から封印された話。
最近の「ガンダムNT」の事情と重なる部分がある。
1987年の作品なのでサイコフレームが登場する前の設定になるわけだけど、それほどありがちなネタということ。真面目に取り合う必要はない。
本誌には注釈が記載されている。
タイラントソードはガンダムワールドをベースにオリジナル設定を付加したものである。
元連邦軍パイロットの著書「ネオファリアの中で」からエピソードを抜粋して構成するフォトストーリーである。
また、書籍からの抜粋という体裁なので、宇宙世紀のおとぎ話として扱うことができる。
・1987年9月
モデル:RS-82B-R ジム2改
時代はUC0087
ネオジオンによる輸送船襲撃が頻繁に行われていた。
地球連邦の辺境守備隊がマラサイ6機と正体不明機1機と遭遇する。
遭遇するところまで。続きは無い。そしてこの正体不明機は話とは全く関係ない。
この作戦を最後に、主人公キース・マクレガーはアナハイム勤務になる。
・1987年10月
モデル:RS・NF-81-STI-SES ネモソード改
アナハイムの第13開発局を別名ネオファリアといい、主人公はここに所属する。
著書「ネオファリアの中で」とは、アナハイムの開発局で起こった出来事をまとめた回顧録ということ。
話とは関係ないが、Z計画は第5開発局が担当していた。
キースは新型機ネモソード改によるテスト飛行を行う。
あまりに強烈なGにさらされて、SEジェネレーターのユニットを強制排出することで辛くも帰還する。
SEジェネレータというのが今後の話の中核。
話とは関係ないがネモソード改は3機中2機がテスト中に大破している。
・1987年11月
モデル:SX・NFR-OISES タイラントソード
フォトストーリー休載、機体解説のみ
新しい機動兵器体系の確立を目的とするSE計画の成果がタイラントソード。
SEは暫定的空間粒子消失制御システム subject effacement の頭文字からきている。
このシステムはミノフスキー物理学の権威ネイナ・ファルムという30代という若さの女性が理論提唱したもの。
SEジェネレータから発生する出力は高すぎるために空間が歪み、磁場が狂う。これは反重力機能として応用される。
さらにエネルギーを転移、消失させることができるが、これは偶然の産物でありシステムの解明はされていない。
運動性能は他のMSを凌駕し、その加速によって発生するGを制御するためにSEジェネレータによる反重力機能が使用される。その慣性制御の比率を抑えることで高機動戦闘が行える。操縦は困難となるため機体制御は思考で行う。
デザイナーのコメントによるとZZガンダムでも5秒もたないで撃墜されるとのこと。
・1987年12月
モデル:RS・NF-81-SES-Ⅲ スレイブソード
タイラントソードのテストとして最新のMA3機と模擬戦をする。
結果、回避パターンのテストも含めて180秒で目標撃破を達成。
ソードという名称はMSとは違うカテゴリーのものを作るという意気込みによるもの。
・1988年1月
モデル:ABFS-RR01 メッサーラ・ディノファウスト・ジュピター/アルファ
木星師団『ジュピターズ』は独自の命令系統を持つ教導部隊で、ティターンズ、エゥーゴに続く第3勢力として台頭しつつあった。
そこでタイラントを用いたジュピトリス撃破命令が下る。
タイラントソードと、シロッコの駆るメッサーラとのドッグファイトとなる。
実験兵器ゆえの信頼性の低さが仇となって撃破には至らず。
・1989年2月 小説2ページ
モデル:タイラントソード改 アグレス
作戦は継続されている
先ほどの実戦で得たデータから仕様を変更。
SEジェネレータをAGタイプに換装、これがアグレス。
ネオファリアの所有する戦艦スピノソアの戦力は4機、ジュピトリスには100に近いMSが想定されている。明らかに戦力差がかけ離れており、これはSE計画が連邦軍に見放されたが故の作戦だった。
タイラントは推進力を前方に放出して84機のメッサーラを瞬時に空間ごと破壊、ジュピトリスにもダメージを与えた。この戦闘により戦力の大半を失ったシロッコはティターンズとの接触を図ったのであった。
その後ネオファリアのチームは解散、ソードは極秘処分されネイナは行方不明となっている。
タイラントソードは無人機であるスレイブソードと連携を行う運用が想定されている。
それを行えるのは人工知能に対してのコミュニケーション能力が突出した「ネクストワン」であり、それがキースがパイロットに選ばれた理由である。
タイラントと護衛用のスレイブ2機、前衛のパシケファロ3機、後方支援用のアパト2機、索敵用のイクチオン1機により構成されたユニットは地球圏の全MSに匹敵する戦力となるといわれていた。
話とは関係ないが、ディジェSE-RというMSはSEシステムと関連がありそうだがはっきりしていない。タイラントソードの作中には出てきておらず、唐突にMS大全集(1988)に収録された。MSじゃなくてソードなのかもしれない。
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