【ガンダム重箱の隅探訪】ネメシスの天秤
『ガンダムカバード ネメシスの天秤』はホビージャパン出版のRPGマガジンに連載されたTRPGのリプレイである。
つまり小説ではないものを小説風に読めるようにしたものだ。
連載期間は1998年の2~9月と長期であるうえ挿絵イラストもしっかりとした豪華で気合の入った企画だが、リプレイであるが故に作品として扱いにくい微妙な立ち位置にいる。
何冊も集めるのが面倒な人はRPGマガジングレイトVol.3に(省略はあるが)全8話分が纏めてあるので1冊で全容は分かる。
1997年2~4月には偵察部隊激戦譜という同じようなリプレイ企画もあったが、設定がカバードより地味なためか認知度は劣る。
著者は高平鳴海
キャラデザは田島直(中村プロのアニメーターとしてVとGガンにも参加)
全41ページ
舞台背景は宇宙世紀79年の11月
主役機のモビルスーツは換装して戦うハイスペックな実験機で、カバードという名称なのはコアファイターが本体だからだろう。
数の不利を覆し数多くのMSを相手に戦い抜く様はエースさながら。
ニュータイプパイロットが複数出てくるし新型MAも複数出てくるしで、技術レベルの設定は好き勝手にやってるように見えるのでファーストガンダムの時代には合ってないと思う。原作キャラとの絡みがあるのは見どころで、一年戦争時のブレックスの暗躍が伺える内容もある。
いざ要約してみると起伏の多いシナリオで、端折りはしたけど あまりコンパクトに収まらず大変だった。
1話:謎の実験機
超極秘に開発されたガンダムカバードはサラミスに搭載されて性能テストのためクレタ島へ降下されるのを待っていた。
そこを「レッドウルフ隊」という名のある精鋭部隊に襲撃される。
サラミスは撃沈され専属スタッフとカバードを積んだカプセルがギリシャに降下。
カプセルの降下先に偶然居合わせたのは民間人の少年ダイチ(15歳)。不幸にもジオンのヘリの攻撃の巻き添えをくらってしまう。
身を護るためにカバードに乗り込んだダイチはヘリを撃墜する。
無事に降下したスタッフは10数名は連絡員ライオネルのトレーラーと合流。
話を聞くとダイチは連邦軍のエースパイロット オキタ大佐の息子だったことが判明。
少し間を空けてまたMS戦になるが、オデッサ作戦で敗れたジオンのMS部隊が ちょうどこの街を通りかかったのだった。ダイチは街を守るためにトレーラーに積まれた格闘用のG装備に換装したカバードでザク3機を撃墜する。そしてライオネルから間接的にダイチが伍長に任官されたことを告げられる。カバードのパイロットとなった彼は共にクレタ島の連邦基地に向かう。
地上用基本装備のNタイプ 武装は100mmマシンガンとビームサーベル 電磁バリアが展開可能なIシールド 白兵戦用のG装備 武装は大型ビームサーベルと射出ビームランサーに90mmバルカン 大型Iシールド |
2話:悲しき逃亡者
ライオネルの手配した民間の大型輸送船で移動する一行。
直接の上司はサラミスと共に亡くなってしまった。そのため地中海方面の連邦軍に連絡を取る。
色々と事情を聴かれた後、裏切られたかのように味方であるはずのフライマンタから攻撃を受ける。
が、ここはジオンの領海であったためドップとフライマンタで戦闘を始めて窮地を脱することができた。
そのとき、どこからともなく現れたライオネル。
彼から渡された通信機でQと名乗る人物と会話する。
彼は連邦軍でもジオン軍でもない組織のリーダーであり、サラミスの艦長だったケンドルトン少佐も彼の思想に共感して行動したのだった。
Qから伝えられたのはクレタのホテルに捕らわれた仲間を救出しアフリカ北部アレキサンドリアに向かうこと。
監禁されていたのはアリスというサイド6に住んでいたニュータイプ候補の少女である。
彼女はカバードのパイロットとしてプロジェクトのメンバーの一人に登録されていたのだ。
部屋を襲撃して彼女の救出に成功した一行はQの用意した軍艦に乗り込み目的地のある対岸へ進路を取る。
軍艦はタスマニア級で艦首にジオンのマークが入っているが元は連邦軍の船である。船にはゴッグとカバード用の水中装備が積んであった。
偽装も虚しくジオンのユーコン級2隻と戦闘になる。MSはゴッグ3機とズゴック2機。
カバードは二人乗りのため、ダイチとアリスの二人で操縦する。カバードの性能の前にジオンのMSは全滅しユーコンは撤退。
続けてグラブロとの戦闘になるが味方の操縦するゴッグと共にこれを撃退する。
Mカバード 水流ジェットを装備し、流線型の装甲を持つ。脚部が無いので上陸はできない。 そのシルエットはモビルアーマーに近い。 武装は肩部クローx2、手持ちのロケットランチャー、魚雷x4、爆雷ポッドx2、対空ミサイルポッドx2 ゲル状物質を利用するリキッドシールド |
3話:狂気の砂漠
無事にアフリカ北岸に上陸してアレクサンドリアへ向かう一行。
港は警戒されているため陸路からの潜入を試みる。
カバードは野戦用のF装備に換装されてサムソントレーラーでリビア砂漠を抜ける。
東へと進んでいると反対側からジオン軍に追われて難民が逃げているところに遭遇。
相手はヘリと車両だったのでカバードがそれを難なく撃破。
難民たちはダイチの故郷の人たちで、ここでいろいろ悶着があった。
一方、カサンドラとマックスはカバードから攻撃を受けたジオン軍になりすますことでアレクサンドリアの軍港に潜入。
そこでライオネルと合流して、次のQからの指令を受ける。
その内容はゲリラの武装蜂起に協力してイスマイリアの宇宙港から宇宙へ上がれというものだった。
ゲリラのリーダー ケマルとの話で、Qの組織ネメシスが秘密結社のようなものだと分かってくる。
作戦会議の途中でアジトがばれてジオンの襲撃を受けるカサンドラとマックス。追ってから逃げる途中で二手に分かれてカサンドラだけが捕まってしまう。
一方、ダイチたちは弱気になったメカニックが連邦軍に投降したことで
ミデアの運んできたジムx5ジムコマンドx1と戦闘になっていたが、無事に勝利する。
Fカバード 期待各部に増加装甲を装着してあり ホバーシステム、短時間の飛行が可能なジャンプブースター、ジャンプ用フィンなどを内蔵したバックパックが特徴の野戦仕様装備。 180mmキャノン、ヒートロッド、90mmバルカン、4連ミサイル |
4話:赤狼の咆哮
カサンドラはホテルの一室で目を覚ます。彼女を保護したのはレッドウルフ隊のジギタリス。
死んだ姉の面影を見つけて情に流され助けたのだった。
まもなくゲリラによるアレクサンドリア奪還作戦が始まる。
アレクサンドリアの街の入り口をザクキャノンとデザートタイプが塞いでいる。
これとカバードの戦闘中、足元にNTの少年テオとその姉ミオの姿を認める。
二人からテレパシーを受け取るアリス。好戦的な姉に対してアリスを仲間と見做すテオ。
しかし今はMSと交戦中。いつの間にか二人は姿を消していた。
一方、マックスはゲリラと協力してイスマイリアの要塞を制圧。
休む間もなくレッドウルフ隊のガウと搭載機グフx5とドムが襲ってくる。
カバードはケマルの用意したA装備に換装。
ギリギリまで戦闘を行いHLVで宇宙に上がる一行。
グフのパイロットの一人はジギタリスだったが、カサンドラの通信を受け呆然として立ちつくす。
AカバードのAはArticleの略 ミノフスキー粒子下の砲撃戦を想定した光学照準機を装備してある。 武器はランドセルに内蔵されたメガビームキャノンとレールガン、ビームライフル、ビームダガー。 |
5話:凍てつく宇宙
HLVはネメシス所属のマゼラン級ナッシュビルに回収された。
連邦の艦だがジオンのMSも搭載している。
そこでアリスの音楽教師でもあるクリストファー司令と落ち合い最終目的地が月のアナハイムであることを知らされる。
艦の補修も含めて、あと2~3週間はかかりそうだ。
ダイチが宇宙での戦闘訓練をしていると連邦軍の
マゼラン、サラミスx4、コロンブス、ジムx2、ボールx4、セイバーフィッシュx4の大部隊と遭遇し戦闘になる。
被弾して制御不能になったカバードは無人コロニーに漂流する。そこでダイチとアリスが良い感じになって、マックスがザクで助けに来る。
そこをレッドウルフ隊のムサイに見つかって、NT姉弟の乗るモビルアーマーMAN-07ガローメのビットによってザクが撃墜される。
ダイチたちはコアファイターで立ち向かうことになるが、そこに入ってきたのはマックスの甥ハルバートの操縦する重戦闘機Cファイター。
Cファイターがコクピットブロックを切り離すと、コアファイターとドッキングすることでCカバードとなり、ガローメと交戦。
ガローメはガロ・ブラン、ガロ・ノワルに分離する戦法を取るが、消極的なテオは相手にせずにミオの動きを止めるつもりで撃ったビームがエンジンに直撃。ミオが死んでレッドウルフ隊は撤退した。
CカバードのCはChargeの略 大型のブースターでの一撃離脱がコンセプト。 コアファイターなしでも戦闘機として運用が可能。 武器はビームサーベル、大型ショットガン、大型Iシールド、拡散ビームキャノン、ミサイルx10 |
6話:血の万華鏡
ネメシスの艦隊は民間ドックにて全艦の修理を受ける。
その間はサイド4のリゾートコロニー「エルゾア」で休暇を楽しむことになった。
そこでマックスはダイチに自分が最初から連邦軍ではなくネメシスのメンバーであったことを明かす。
ネメシスは戦後の連邦に立ち向かうために作られた戦力であり、カバードの試験データを集めることが これまでの目的だった。
マックスはアナハイムの社員で、カバードを設計したのもマックス。その集めたデータをアナハイムに持ち帰ろうというのだ。
連邦軍のコーウェン将軍となにやら揉めているクリストファー。
カサンドラはその声に聞き覚えがあり、彼はQと名乗っていた人物のようだ。
カサンドラ、マックス、ダイチが休暇に出ている間にネメシスの艦隊は何も告げずに出航。
そのタイミングでレッドウルフ隊に拘束された3人はザンジバルに連行される。
カサンドラだけは またジギタリスの部屋で丁重に扱われる。
一方、アリス、ハルバート、メカニックのヤンの3人はライオネルの持ってきた戦闘機バスターホークでザンジバルを追撃。
ゲルググで出撃しようとするジギタリスの前にカサンドラに拳銃を突き付けてマックスが脅しをかける。
その隙にダイチとカサンドラはゲルググを奪うことに成功するが、狙撃されたマックスは死亡。
ザンジバルから脱出したダイチたちはライオネルの持ってきたパプアでアリスたちと合流する。
その先で見たのはクリストファーの艦隊の残骸だった。数名の生存者の話によるとソロモンの主力艦隊の攻撃を受けたようだ。
連邦政府中枢に入り込んだネメシスの幹部は、想定より早く戦争が終結した場合、続けてすぐネメシス潰しが行われるであろうことを予測した。それでネメシスの活動の証拠となるカバードとそれを知る者を闇に葬る必要があったためにカバードの搭載艦には撃沈して貰おうと考えたわけだ。
クリストファーはアリスを守るためにソロモン艦隊を引き付けて死んだ。
7話:運命の闘い
路頭に迷う一行にサラミスと補給物資を持ったブレックス大佐が接触してくる。
彼が言うにネメシスは一枚岩ではないという。
アナハイムはネメシスの決定とは別にカバードのデータを所望しているということで、自力でフォンブラウンまで辿り着ければ身柄を保護してくれるらしい。
しかし道中、連邦軍に襲われる。
相手はジムx6と、全長50メートルの巨大艇RMF-76シャンピニオン。
しかしそれらはソロモンに向けたソーラシステムに焼かれる。ダイチは機体を捨ててコアファイターで空域を離脱。
続いて攻めてくるのはセイバーフィッシュ部隊。
その戦闘の黒いコアブースターにはダイチの父親ガイ・オキタが乗っていた。
あくまで連邦軍人として反乱分子であるダイチとドッグファイトを始める。そのプレッシャーによりNTとしての兆しを見せたダイチは止むを得ず父の機体を撃墜する。
8話:約束の地
12月27日
父を殺したダイチが鬱状態になっている間に
クリストファーの遺した地図から、アリスとハルバートがカバード計画の最終系Rカバードを回収。
そのときサラミスが復讐鬼テオの乗るMSM-02-2ジオング2号機に襲われる。
テオの説得を試みるダイチ。ダイチとの共感でハルバートもNTに覚醒。
コアファイターからジオングのコクピットに乗り移って説得するが、テオは頭を分離させて脱出。
動きを止めようとしたRカバードのクローによってジオングヘッドは撃墜されてしまった。
12月31日
フォンブラウンの周りはネメシスのMS部隊が約50機控えている。
ジムコマンドやジムスナイパーなどの最新鋭機だ。
それに対抗するのはカサンドラのゲルググ、ハルバートのバスターホーク2、エイミーのコアファイター、ダイチとアリスのRカバードだけ。
絶望的な状況の中、5機のビグロまで乱入してくる。
ピンチのカサンドラを救ったのはジギタリスのゲルググだった。
先刻、ジオンが戦争に敗れレッドウルフ隊は自分たちの意思で彼女たちを助けに来てくれたのだった。
おかげで全員が月の地表に辿り着き、それ以上の追撃を受けることは無かった。
約束通り自由の身を手に入れた彼らは、それぞれ思い思いの場所で暮らし始める。
エネルギーを使い果たしたRカバードは半壊した姿で今もクレーターの底に佇んでいるという。
完
RカバードのRはRaidの略 有線式のオフェンスビットとディフェンスビットを搭載したNT専用機。 この時代のMS技術を結集した贅沢な設計。 Oビットx6 Dビットx6 Iフィールドの展開が可能 ビームキャノンx2 シールドに装備されている ビームマシンガン 60mmマシンガンx2 歩兵掃討に便利 爆雷ポッド アンチビーム機雷ポッド 肩部クローx2 バスターホーク2とのドッキングにも使用される 大型ビームサーベルx2 |
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