Outer Wilds をネタバレしつつ紹介
年末年始に没頭するための新しいゲームとしてOuter Wildsを用意し、新年が明ける前にエンディングまで到達。
クリアまでの時間は28時間だった。
このゲームは2019年にXBOX ONEとEpic Games 向けに発売されたのが初で、現在ではPS4, 5, seriesX, Steam, Switchと多くのプラットフォームで遊べるようになっている。
特にSwitch版は去年の12月にリリースされたばかりで長期にわたり人気を維持したまま幅広いニーズを得ていることが伺える。
開発はアメリカのMobius Digitalというところで、インディーズメーカーということもあり本作以外の目立った作品はないようだ。
まずはどういったゲームなのかを簡単に説明してから感想に入ろう。
形式としては一人称視点でオープンワールドを探索して回るSF謎解き3Dアクションアドベンチャーといったものだ。その舞台は太陽系という規模の大きさで、宇宙船に乗ってシームレスで惑星間を往来できるのが本作の魅力的な特徴だといえる。
まあ、期待させすぎてもいけないので注釈を入れておくと、各惑星の外周は1分程度で1周できる程度にはコンパクトに作られている。それはゲームの都合でそう見えているだけだと思っているが、そこを掘り下げていくと22分でどうのこうのという部分に無理が出てきかねない。
(全体マップ)
えー、宇宙飛行士である主人公はハーシアンという4つ目を持った種族で、他の惑星で発見できるのは既に滅びたノマイと呼ばれる目が3つの種族が遺した遺跡でしかなく、エイリアンとの宇宙間交流には期待できないので、そのつもりでいて欲しい。
そして彼らの残した情報の断片を搔き集めることでゲームクリアの方法が明らかになっていくという手法のストーリーテリングが使われている。彼等の文明は信じられないくらい高度なのに映像の類は見つけることができない。主人公は基本的に無個性で喋らないタイプなので、この宇宙旅行は孤独で寂しいものになっている。それに付随して親切な助言をくれる役者には不足しているようで意図的にぼかしたヒントが多いためスムーズに謎を解くことの障害となっている。
(残された会話の記録は翻訳機で解読できる)
あえて言うのは心苦しいことだが、これを宇宙観光ゲームだと勘違いしているならプレイする必要はない。宇宙には危険がつきものとはいえ油断していると簡単に死ねるゲームだからだ。そこには酸素残量の問題もあるし、重力の概念もあるので強い衝撃を受けると死ぬ。そもそもゲームの根本的なシステムとして、主人公が目を覚ましてから22分経過すると太陽が超新星爆発を起こすので即座に宇宙そのものが終わる。(これは極序盤に発覚する展開なのでネタバレと怒らないで欲しい。どうせネタバレはするつもりだけど。)
そんなタイムリミットが課せられた状況で、のんびり散歩なんてする余裕はないというのが1点。
そしてゲームシナリオとの兼ね合いからノマイの文明の中でも科学的な痕跡ばかりがフォーカスされていて、生活様式のような文化に関する描写はゼロではないが省かれていると見て良い。その点で言っても観光目的での楽しみ方はできなかった。
22分で終わってしまうゲームというのは真実であり部分的に嘘である。
なぜなら宇宙が終わった後は記憶を維持したままスタート地点から再開するからだ。これはシナリオ上そうなっていてプレイヤー視点のメタ的な話ではない。これがゲームシステムの根幹になっている部分であり融通の利かない汚点でもある。
前述したように探索中に即死しかねない箇所が必要以上に多く存在していて、謎解きをする以前の問題としてロケーションへのアクセスが困難なバランス調整になっている。苦労して目的地へ到達できたとして、そこで何を見るべきかを模索しているうちに、やがて来るタイムリミットにより無慈悲にスタート地点へと送還される。そしてまた同じ移動操作の繰り返しが求められるわけだ。その移動ストレスが多大であったことで、私のこのゲームに対する印象が著しく落ちた。
ここでひとつ具体例を挙げておくと、ワープ装置を取るために数分かけて砂が引くのを待ってから手に入れたとする。ここでタイムリミットのうち1/3ほど失われている。これを持ったまま大型宇宙船に運ぶ必要があるのだけど、加速すると攻撃姿勢を取ってくる魚の中を進んでいく必要があり、そこで急かされる気持ちと慣性移動だけでは時間が足りないという葛藤の中で、ちょっと冒険して噴射してみたら1発アウトでやりなおし。というのを3回繰り返した後、イライラしすぎて4回目は宇宙服を着るのも忘れて船外へ飛び出していた。
プレイ時間が30時間近くになるのは、そういった要因である。
そこに付け加えるなら、最終的に到達できた船の中で少ない残り時間を使いワープ先の座標を入力する場面で、1回目は何が間違ってるのか分からずにタイムリミットを迎えた。だいたい入力方法の説明が無かったし、入力できているのかどうかも、入力した後に必要な操作も教えてくれない。疑心暗鬼のまま1回目を失敗したらもうやり直すより先に答えを見ていた。
(入力失敗例)
といった感じで、シナリオを褒める前にゲーム性に文句を言わせてもらいました。
逆に良い所もちゃんとあった。
普段のBGMは無音なのに、それっぽい要所に付くとフェードインで曲が掛かるようになっている。この音楽の演出は効果的で、歴史的な発見をしたという緊張感と物語への没入感を高めてくれた。
BGMはどこか信号的で宇宙の掴みどころのない揺らぎを感じるため雰囲気にマッチしていたと思う。
良き音楽の甲斐もあり明確に鳥肌が立ったポイントが2つあったことを覚えている。ひとつは量子の月から第6の場所に辿り着いた時、そしてクライマックスのワープで宇宙の眼に辿り着いた時。どちらもマップには載っていない場所だ。人間、未知のものに対する興味は強いもので、皆が崇めていた眼という存在を明らかにすることが出来たという開拓者目線の喜びもあり、本当に存在するかも怪しい領域に踏み込んでしまったという恐怖もあり、不安と期待感を煽る激動的なシチュエーションだった。
更にそこでは全滅していたはずの意識あるノマイと出会うことができて一瞬警戒して固まってしまった。一番印象的なシーンはここになる。
ゲーム性はあれだけど、背景にあるストーリーや特にテキストが丁寧に作り込まれているのは間違いなく、文献からノマイの人柄に触れ、切迫した状況を追っていくうちに彼らに対して感情移入していくと同時に宇宙の神秘にも触れることができる。
そうはいっても話の規模と違ってゲームの規模はコンパクトなので長編小説のような壮大な物語があるかといえばそうではない。
自分はSF適正はある方だと思っているが、全体を通して特別優れたSFのエポックメイキングだとかいうことは思えなかったし、プレイする前に触れたレビューの「絶対ネタバレなしでエンディングを見て欲しい!」「自分史上最高のゲームを塗り替えた!」などの意見はどれも大袈裟で過剰な表現だったなというのはクリア後の感想。もしこれが最初に触れたSFとかだったなら感じ方が違ったか分からないけど。
ではここでピンポイントでエンディングについて触れたい。
最後の展開は宇宙の眼から宇宙が寿命を迎えるのを観測した後に、ビッグバンらしいものを観測してホワイトアウトし、『約140億年後』というテロップの後に現在とは違う宇宙の一枚絵が表示されて終わるというものだった。
その際に主人公が意識下で仲間のパイロットを集めてたき火を囲んで演奏するといった展開は、初見時では正直いって理解が追い付かない話の流れだったが、あのイメージがあったから140億年後の宇宙が あの形になったと今では理解している。
ちなみに140億年という時間は私たちの宇宙の年齢に近いそうだ。つまり宇宙が今の形に育つまでの時間が140億年だった。ノマイが滅んだのが30万年前だから我々の世界と照らし合わせてみても遥か昔の出来事だったと想像できる。
プレイヤーである人間の眼の数は2つでノマイの数はひとつ多く、ハーシアンはそれよりひとつ多い。そして「宇宙の眼」という単語があり、エンディングに期待していたのは、ここの解答だったんだけど、そんなのは私の思い違いで、ただ全員集合からの音楽を奏でるという雰囲気全振りのエンディングには困惑させられた。
とても抽象的でありプレイヤー個々人に解釈を委ねるかのような内容の終わり方であったが、
新しい宇宙の誕生というのが物語の結末であったとするなら、爆発を防ぐために奔走した主人公は報われたとは思えない。宇宙の危機を防いでノマイのやりたかったことや死因も解明した私こと主人公が母星にて英雄的に迎えられるようなことは無かったのだから。
エンディングを迎える直前の体験がストレスフルなリスタートの連続だったということも足枷になって、あの苦労の果てがこれなのか というどうしようもない脱力に苛まれるような気持ちでエンディングを迎えた。
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